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『温泉やくざ』連載しています



「いっぱい出したね」
 片山はやたらやさしい顔で微笑んでいた。俺の目をのぞき込むようにして、ヒゲのそり跡濃い顔をまた何度も寄せてきて唇に唇をそっとぶつけてくる。眼鏡に俺の顔の脂がついてちょっと曇っていた。
「もうよせよ」
「嫌いじゃないだろ」
「なんでわかる?」
 片山は笑って体をはなした。いつのまにか俺のちんぽをスラックスの中にしまいこんでくれていた。
 どうもこいつが相手だと思うようにいかない。
 二人で駐車場に戻った。片山は自分の車に乗り込んでエンジンをかける。窓を開けて、まるで親しい相手にするように手を振っている。俺は少しでも反撃してやろうと呼びかけた。
「お前、まさかこんなことで交渉を有利にしてやろうとか考えてないだろうな」
「それはお互い様だろ」
 片山は笑って走り去った。
 まったく、なんともつかみどころのない、不思議な奴だ。
 不思議な奴、という印象は何度会っても変わらなかった。
 折衝で顔をあわせたり町で見かけたりするたびに、片山はますます親しげな態度をとるようになった。俺といい関係を築いて商談をうまく進めようというやり口なら、まだわかるのだ。しかしそんな感じじゃない。俺相手に下手な近づき方などできないと向こうもプロだからわかってる。かといって、腹を割って手の内を見せて飛び込んでくるという風でもない。壁はあるのだ。距離を感じる。なのに態度はやたらなつっこい。
 俺は片山茂という男のことを少しも理解できなかった。
 なのに、妙に奴のことが胸に引っかかるようになっていった。
 思えば初対面の時から、どこかちがうと感じていた。この男にはなにかある、と直感が告げた。あいつの目。眼鏡の奥の、どこかさびしげな、人を引きつける瞳。いつもまっすぐ俺を見つめてくる。にらんでくるわけでも、探っている風でもない。俺をおそれるがゆえのおびえた目でもない。そう、どこか楽しげな目。
 さびしげ、と思うのだ。なのに同時に、楽しげでもある。
 俺はちょくちょくあいつのことを考えるようになった。仕事相手のことだからと自分には言い聞かせていた。そうでなけりゃ理屈が通らない。それ以外、なにがあるってんだ?
(『温泉やくざ前編』より)



 温泉ホテルのロビーに入ると、すぐに片山の姿が目に入った。片山は一番奥まったソファに座っていて、六井商事の連中となにやら話し込んでいた。みな似たようなダークスーツ姿で片山だけ目立つはずもないのに、回転扉をくぐったとたん、パッと目に飛び込んできた。
 片山の方はしばらく俺に気づかなかった。話に夢中の様子で、男たちの顔を見渡している。だから俺は二分か三分、遠目にだが片山の姿を見つめていることができた。胸が熱くなっていた。
 俺はお前に惚れているぞ。
 片山が笑っていた。さわやかに笑ってまわりの男たちの顔を見回している。それから俺に気がついた。俺を見て、いっそうやさしげな笑みを浮かべ、立ち上がる。ゆっくりと歩いて俺に近づいてくる。その目。お袋にそっくりな目で俺を見てくれる。マザコンもいいとこだな、と俺は内心苦笑した。いい年をした元極道が……。
「向こうにいるのが大野建設だ」
 片山は俺の前に立つとさりげなくフロントの方に顔を向けた。俺もちらりと目だけ動かして見る。四人か五人、スーツと作業服姿の男たちがかたまって立っていた。ぱっと見はごく普通の建設業者だが、なにか裏があるのは間違いない。吉野が俺や親父になんの説明もなく引き入れた会社だった。本来、病院建設に関わる業者はほとんど深大寺組の息のかかったところになるはずだった。つまり、吉野にとっても身内になる。なのに吉野は唐突に名前も聞かない会社を呼び入れた。今日は病院本体の建設を各事業者がどう分担していくかを話し合うための会合が開かれることになっていた。
「いくつか裏がとれた情報がある」
 片山がそう囁くように言った時だった。六井商事の連中が片山を呼んでいた。携帯を手に掲げている。誰かから大事な電話らしい。
「会議室で聞こう」
「わかった」
 片山が会社の連中のそばに戻っていく間に大野建設の連中もぞろぞろと移動をはじめた。会合をはじめる時間が迫っていた。俺も会議室に行こうと歩き出した。そこでいきなり肩をたたかれた。振り返ると吉野と水木が目の前に立っていた。俺はぎょっとして反射的に後ずさろうとした。しかし吉野が俺の肩を抱き寄せた。
「木村さん、これ」
 吉野が上着の内ポケットからビニール袋を取り出した。中を見ると黒いボール状のものがいくつか入っている。どれも細いケーブルでつながっていてなんなのかわからない。それでもイヤな予感がしていた。
 吉野が俺の耳に息を吹きかけながら言った。
「ケツに仕込んでおけ」
「……あ?」
 不思議とどういうことか一瞬で把握できた。そういえば色がピンク色のものならAVで見たことがある。ローターというやつだ。全身が恥辱と怒りで熱くなった。
「これから大事な会合があるんだぞ?」
「どうせあんたの出番はないさ。みんなおれの言うとおりにするしかないんだから」
「ふざけんな」
「口の利き方に気をつけろって言ったろ? こないだのビデオ、よく撮れてたぞ。カメラ三台使ってたからな、編集するだけでずいぶん楽しめたよ」
 全身に鳥肌が立った。背中を押されるまま俺は歩き出していた。ロビーの裏にある便所の前で吉野は煙草をくわえた。便所の前に喫煙所がある。
「おい水木、ちゃんと入れるとこ確認してやれ」
 俺は水木にうながされて便所に入った。たまたま他の客はいない。だから水木は当たり前のように俺の背中を押して個室の一つに入った。豪勢な便所で、男二人でもそう狭苦しくもない。淡い光に照らされてあたたかい雰囲気だが、そこで見ても黒いローターは異様でまがまがしい。
「おい、入れたってことにしろ」
 俺は水木を見下ろしてにらみつけた。以前の水木ならこれだけでビビッて口もきけなくなるはずだった。しかし今はニヤケ笑いでローターを手にぶらさげて俺をまっすぐ見返している。
「兄貴、濡らすと入りやすくなりますよ」
「てめえ……」
「吉野さんの命令なんスよ?」
 水木は俺の口にローターを押しつけた。俺は水木を殴りつけようと身構えた。
「深大寺組のためスよ」
 組のため。
 とたんに組の連中の顔が次々と浮かんでくる。佐倉と嫁さんは一度流産したせいもあって赤ん坊を心待ちにしている。石井は若いのに結婚すると張り切っている。事務所でピンポンに夢中になっていた奴らの笑顔……。
「……んう」
 俺は口にローターを頬張った。ひとつひとつは小さいが、全部で三つもあるのだ。ゴム臭いそれに唾をまぶし、吐き出すと、水木が言った。
「ズボンおろしてください」
「くそ……、あううっ!」
(『温泉やくざ中編』より)





 現在発売中の雑誌ジーメンの十一月号から
『温泉やくざ』(全三回)の連載が始まっています。


かつては近県にその名を轟かせていた深大寺組が
カタギの会社になって二十年。
山間の温泉地を拠点として源泉管理や解体業など地道にやってきたが
東京の大手商社、六井商事がぶち上げた
温泉病院建設という大事業に食い込もうと躍起になっている。

組長の片腕として深大寺組を背負っている木村は男好きでS気がある。
私生活では決まった相手と続かない遊び人だが、
剛胆で男気があり、男の中の男として
組の舎弟たちからは絶対の信頼を寄せられている。

そんな木村の前に、六井商事が送り込んだフィクサー
片山があらわれる。
六井商事は元極道の深大寺組と腕を組みたがらず、
片山を交渉係として送り込んだのだった。

顔がこわく入れ墨を背負った木村と比べ、
片山は見た目こそ優男だが肝が据わっている。
町営の露天風呂で出くわした二人は関係を持つが、
同じ頃、組町深大寺清三の跡取り息子、
吉野典明が留学先から帰国し、
物語は意外な方向に進んでいく……。



てな感じのお話です。

ヤクザものなのでハードな雰囲気になりがちですが、
それだと読みたがらない方も多いかと思いまして、
ソフトな部分も多く取り入れています。

舎弟たちは愉快な仲間たちな雰囲気ですし、
恋愛要素としてはかなり純愛で、
BLに近い部分もあるかと。

そしてヤクザものなのでもちろん調教シーンも満載。

組を背負う責任感の強い主人公の恋と調教の物語。

ぜひジーメンをお買い上げの上、読んでいただきたいです。



ちなみにただ今、後編を書いてます。





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小玉オサム

Author:小玉オサム
ゲイ雑誌各誌に小説を送りつけ続けて、22年。
白髪の目立つ43歳。鼻毛にも白いものを発見! 鼻くその話じゃないよ。

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